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うつ病エピソードチェック表

第1部 プログラム開発の経緯

4.仙台市における高齢者のうつ病と自殺念慮の実態調査

 これまでにも北東北,北陸,九州などの農村地域を中心に,高齢者のうつ対策や自殺予防対策が自治体レベルで取り組まれてきました.これらの地域は,過疎化・高齢化が進行し,高齢者の自殺率も際立って高い地域です.しかし,高齢者人口が急速に増大しているのは農村地域ばかりではありません.わが国では,人口が密集している都市部住宅地域においても,高齢化の問題は深刻です.特に,昭和40年代に新たに宅地造成された都市近郊の大規模ニュータウンでは,比較的近い世代の人々が,開発直後の同じ時期に転入しているために,開発から30年〜40年を経た今日,高齢化が急激に加速しはじめ,高齢者のための保健福祉資源が追いつかなくなるという特殊な状況があらわれてきています.
 私たちは,2002年と2003年に仙台市宮城野区鶴ケ谷地区で,高齢者の抑うつ状態と自殺念慮について実態調査を行いました.この地区は,昭和41年に宅地造成された,わが国では比較的古い新興住宅地域であり,2002年4月1日現在の人口は16,994人,高齢化率は24.4%でした.同時期の仙台市の高齢化率が14.3%,わが国の高齢化率が18.4%でしたので,当時としても突出して高齢化が進行していた地域であることがおわかりいただけるかと思います.
 2002年の調査では,70歳以上高齢者の20%に抑うつ症状が見られ,4.5%に自殺念慮が認められ,「うつ症状」がある人はない人に比べると自殺念慮をもつ危険性が30〜40倍高まり,「困ったときの相談相手がいない人」「寝込んだときに身のまわりの世話をしてくれる人がいない人」,つまりソーシャルサポートがない人は,ある人に比べると,自殺念慮の危険性が約2倍高まることがわかりました.年齢が高いこと,女性であること,配偶者と離別または死別していること,身体疾患や疼痛があること,運動機能や日常生活機能が低下していること,具合が悪いと自覚していること,もの忘れがあることのすべてが「うつ症状」と関係し,なかでもソーシャルサポートの欠如が「うつ症状」と強力に関係していることがわかりました(図5).
 さらに,「うつ症状」のある高齢者のお宅を精神科医と保健師が訪問して面接をして調査しましたところ,「うつ症状」が見られる高齢者の53%に何らかの精神疾患が認められ,精神疾患があると自殺念慮の危険はさらにlO倍以上高まり,大うつ病が見られる場合には約40倍自殺念慮の危険が高まることがわかりました.

●図5.高齢者の自殺念慮と抑うつ症状の関連要因図5.高齢者の自殺念慮と抑うつ症状の関連要因