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各支部では、地方自治体・企業および諸団体と協力して、各種講演会・セミナーを実施し、健康づくりの推進につとめています。
健康増進に伴う知識の普及啓蒙事業の一環として、健康に関連する各地域の自治体、団体等の協力、後援を得て一般国民や自治体、企業等の健康管理者を対象に「健康日本21」の推進と健康管理のあり方等についての講演会・セミナーを実施しています。

平成27年「健康セミナー」
ストレスチェック制度の導入と適正な運用について
平成27年「健康セミナー」ストレスチェック制度の導入と適正な運用について
ストレスチェック制度の概要について

メンタルヘルスチェック制度の創設は、2010年4月19日に長妻昭厚生労働大臣(当時)が、企業が行う健康診断で、精神疾患に関する検査を義務づける方針を示し、「労働安全衛生法の改正も検討する。増え続けるうつ病や自殺を防ぐ狙い」と、記者団に発表した政府方針に端を発しています。

その後、経営側、労働側、産業保健スタッフ、弁護士による厚生労働省「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」のとりまとめに従って、労働者のメンタルヘルス不調の把握方法、および把握後適切に対応するための実施基盤の検討が続けられました。

そして、さまざまな議論を経て、当初の自殺予防、労災予防といった2次予防から、セルフケアと環境改善・保持促進を目標とする1次予防へと内容を変えて、ストレスチェック制度の導入が決定しましたが、長妻大臣発言から足かけ4年の長い道のりでした。

ストレスチェック制度は、労働者のストレスへの気づきを促すとともに、職場環境の改善につなげるための、一般定期健康診断とは別の枠組みです。労働者にとっても事業者にとっても意義のある制度として、適正な運用が求められます。

今後は、「実施者」と「事業者」の連携を図りながら、それぞれの役割を果たし、事業所内のルール・相談体制を作るなどして、労働者に対する不利益な取り扱いがないようにすることです。ていねいな方法で実施するよう留意することが大切になってくると思います。

岩崎明夫氏
ストレスチェック制度導入に伴う
産業医・企業から見た課題

ストレスチェック制度は、事業者に課せられた法定制度で実施義務があり、罰則規定はされていませんが、労働契約上の債務は事業者となります。

労働者は希望する場合のみの受検ですが、事業者の労働者の受検勧奨に対する努力義務が課せられ、ストレスチェックを受検しない労働者の職場のストレスケアは、ラインによるケアとして管理監督者が対応しなければなりません。

そんな中で、ストレスチェックを実施する上でのリスクを考えてみます。

@実施体制の整備が不完全(判定者の資格の問題、個人情報の問題、外部委託することの連携の問題、派遣労働者への対応)
A「高ストレス」と判定された対象者に対する対応の問題
B「高ストレス」と判定されなかった場合の問題
C「高ストレス」と判定された場合の面談する医師との連携
D「高ストレス」面談結果の事業者の対応

このようなリスクがあげられますが、いずれにしても、事業者にとっては実施義務がある中で、事後措置が非常に重要になってきます。健康診断と同じようにやりっぱなしではベネフィットがないわけですから、フォロー体制の整備が優先されることになります。

ストレスチェックの受検は、事業者の実施義務に対して、労働者側はあくまでも自由意思です。そしてストレスチェックの結果を事業者に報告する場合も、受検者の同意が必要ですし、高ストレス者は申出をしない限り、面談指導を受けることはありません。事業者と労働者には温度差が生じることが考えられます。

制度導入に際しての今後としては、実施しないことのリスク、実施することのリスク、個人情報保護のリスク、実施者の資質に関するリスク等々のリスク管理が課題となってくると思います。

岡田邦夫氏
企業・労働者・産業医、
ストレスチェック制度の実施とそれぞれの立場から

勤労の権利と義務を定めた日本国憲法第27条の中にある、労働基準法、労働安全衛生法、作業環境測定法、じん肺法、その他の法則のうち、改正労働安全衛生法に基づいて導入されることになった法定制度が「ストレスチェック制度」です。

ストレスチェック制度と民事責任という観点からは、事業者側には、@契約責任、A不法行為責任という、性質の違った2つの責任が課せられます。いずれにしても、安全配慮義務、労働安全衛生法遵守の義務に従って、企業の責任を遂行しなければなりません。

まずは、改正法を遵守することです。改正法の遵守とは、ストレスチェックの実施・手続きを整備し、ストレスチェック制度に関する社内規定を整備することです。改正法を遵守することがリスクヘッジになるのです。

また、大切なことは、証拠になるものを常に作っておくことです。
「ストレスチェックを実施しています」と口で言っても証拠になりません。物理的な証拠が不可欠です。文章で残す、メールのやり取りを残すなど、目に見える証拠を残すことをやっていただけたらと思います。

「法を遵守する」ことについて、より具体的に申し上げると、「人並みのことをやる、他の会社がやっていることをやる」ということです。ガイドラインやマニュアルなどを参考に、マジョリティー側に属して“横並び”を心がければ、大きな間違いは生じません。大事なことは結果ではなく、法に準じてそれなりに実践したという証拠ですから。

ストレスチェックを実施するにあたっては、企業と従業員の間には労働契約、企業と医師の間には委任契約があり、医師と従業員の間には契約関係は存在しません。企業は医師、従業員との関係を潤滑にトラブルなく進める、やるべきことははっきりしているのです。他社に比べて見劣りしないことをやるためにも内規の整備等をして、やるべきことをやっていただきたいと思います。

桜木秀樹氏