特殊健康診断
有機溶剤健康診断(有機溶剤中毒予防規則第29条)
法令で定められた有機溶剤業務に従事する労働者に対しては、雇入れの際、当該業務への配置替えの際およびその6ヶ月以内ごとに1回定期に、次の項目の健康診断を実施しなければなりません。
必ず実施すべき項目
- 業務の経歴の調査
- 作業条件の簡易な調査
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- 有機溶剤による健康障害の既往歴の調査
- 有機溶剤による健康障害の自覚症状および他覚症状の既往歴の調査
- 有機則別表で指定されている有機溶剤の代謝物の量の検査についての既往の調査結果の調査
- 有機則別表で指定されている貧血検査(血色素、赤血球数)、肝機能検査(GOT(AST)、GPT(ALT)、γ-GTP(γ-GT))、眼底検査についての既往の異常所見の有無の調査
- 過去の健診での貧血検査、肝機能検査、腎機能検査および神経学的検査の異常所見の有無の調査
- 有機溶剤による自覚症状または他覚症状と通常認められる症状の有無の調査
【下の表の有機溶剤について必ず実施すべき項目】
- 尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査
- 肝機能検査(GOT(AST)、GPT(ALT)、γ-GTP(γ-GT))
- 貧血検査(血色素量および赤血球数)
- 眼底検査
【医師が必要と判断した場合に実施しなければならない項目】
- 作業条件の調査
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 腎機能検査
- 神経学的検査
※自覚症状または他覚症状については、医師が次の項目のすべてをチェックしなければなりません。
1.頭重 2.頭痛 3.めまい 4.悪心 5.嘔吐 6.食欲不振 7.腹痛 8.体重減少 9.心悸亢進 10.不眠 11.不安感 12.焦燥感 13.集中力の低下 14.振顫 15.上気道または眼の刺激症状 16.皮膚または粘膜の異常 17.四肢末端部の疼痛 18.知覚異常 19.握力減退 20.膝蓋腱・アキレス腱反射異常 21.視力低下 22.その他
作業によって追加で行わなければならない検査(有機則別表)
次表に掲げる有機溶剤等を取り扱う業務に常時従事する労働者に対しては、代謝物等の検査項目が追加されます。
有機溶剤等 | ||
エチレングリコールモノエチルエーテル (別名:セロソルブ) エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート (別名:セロソルブアセテート) エチレングリコールモノ‐ノルマル‐ブチルエーテル (別名:ブチルセロソルブ) エチレングリコールモノメチルエーテル (別名:メチルセロソルブ) |
貧血検査(血色素量および赤血球数の検査) | |
オルト-ジクロルベンゼン クレゾール クロルベンゼン 1,2-ジクロルエチレン(別名:二塩化アセチレン) |
肝機能検査(GOT(AST)、GPT(ALT)、γ-GTP(γ-GT)) | |
キシレン |
尿中のメチル馬尿酸の量の検査 | |
N,N-ジメチルホルムアミド |
肝機能検査 尿中のN-メチルホルムアミドの量の検査 |
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1,1,1-トリクロルエタン |
尿中のトリクロル酢酸または総三塩化物の量の検査 | |
トルエン |
尿中の馬尿酸の量の検査 | |
二硫化炭素 |
眼底検査 | |
ノルマルヘキサン |
尿中の2,5-ヘキサンジオンの量の検査 |
※上記指定の有機溶剤のいずれかをその重量の5%を超えて含有する物
代謝物測定の必要な特定化学物質に係る管理暫定値
特定化学物質 | 検査対象とする代謝物 | 管理暫定値 |
スチレン | 尿中マンデル酸(MA) | 300mg/L |
テトラクロロエチレン | 尿中トリクロル酢酸(TCA)または 尿中総三塩化物(TTC) |
3mg/L |
トリクロロエチレン | 尿中トリクロル酢酸(TCA) | 30mg/L |
尿中総三塩化物(TTC) | 100mg/L | |
エチルベンゼン | 尿中マンデル酸(MA) | 300mg/L |
なお、次の特別有機溶剤については、➀1種類または複数種類の特別有機溶剤の含有量が重量の5%を超える製剤等、➁特別有機溶剤と他の有機溶剤の含有量の合計が重量の5%を超える製剤等は、有機溶剤健康診断を実施する必要があります(特化則第41条の2)、特定化学物質健康診断と有機溶剤健康診断の両方を必要とする場合があります。
エチルベンゼン、1,2-ジクロロプロパン、クロロホルムほか9物質(四塩化炭素、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、スチレン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、メチルイソブチルケトン)